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ホタルルシフェラーゼの新しい触媒機能を発見(初夏の夜のミステリーを解く)

2003年06月13日

 チッソ株式会社(本社:東京都中央区、社長:後藤舜吉)と名古屋大学大学院生命農学研究科大場裕一助手は、ホタルルシフェラーゼに発光を触媒する機能のほかに、脂肪酸酸化の初期段階において必須である脂肪酸コエンザイムAの合成を触媒する作用を有することを発見しました。

 ホタルは、日本の初夏の夜を飾る風物詩でもあり、代表的な発光生物です。現在まで、その発光反応は、ルシフェラーゼと呼ばれる触媒酵素とルシフェリンと呼ばれる発光基質(低分子有機化合物)およびATP(アデノシン三リン酸)、酸素、マグネシウムイオンの存在下による酸化反応であることが知られています。この発光反応は、生命維持に必須なエネルギー因子であるATPが使用されることから、発光を利用した細菌の検出法にも利用されています。

これまでに報告されているホタルルシフェラーゼの反応機構の研究および近年の蛋白質の高次構造の情報から、ホタルルシフェラーゼには、「脂肪酸(リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の高級不飽和脂肪酸)コエンザイムAの合成活性」があることを推定し、実験的に証明しました。
具体的には、日本および米国産のホタルルシフェラーゼの存在下で、種々の脂肪酸、ATP、コエンザイムA[註]、マグネシウムイオンを反応させ、生成した脂肪酸コエンザイムAを分離後、質量分析法で確認を行いました。
その結果、日米両国産のホタルルシフェラーゼとも脂肪酸コエンザイムAの合成を触媒する作用を有していることが明らかになりました。
 ホタルの発光は、生殖と密接な関係があり、雌雄誘引の為と考えられていますが、今回の発見は、ルシフェラーゼが存在する発光器の細胞内において、ルシフェラーゼ自身が脂肪酸酸化を促進させることにより、発光の為のエネルギー(ATP)を生産する可能性があることが示唆されます。さらに、ホタルルシフェラーゼ遺伝子の起源は、脂肪酸コエンザイムA酵素遺伝子から変化(進化?)したことも、想像させる結果であります。

 チッソは、ルシフェラーゼをはじめ、カルシウム濃度の測定に利用するイクオリンなど、バイオフォトン(生物発光材料)の研究を進め、将来的には、医薬分野で使用される検査、診断用スクリーニングシステムへの展開を目指しております。
 尚、本研究は速報誌「FEBS Lett.(Federation of European Biochemical Societies Letters)」 に4月10日付けで掲載されております。

以上



[註]:コエンザイムAは(補酵素Aともよばれる)、種々の生体反応(脂肪酸酸化、脂肪酸合成、アミノ酸代謝、ステロイド合成等)に関与する重要な物質です



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